井原市出身の彫刻家・平櫛田中は、107歳で没するまで現役の彫刻家として制作を続けたことで知られる人物です。「六十七十は洟垂れ小僧、男盛りは百から百から」という言葉を残し、晩年になっても衰えることのない創作意欲を貫いた生涯は、多くの人に勇気を与えてきました。井原市立田中美術館は、その代表作の数々と、生涯にわたる制作の歩みを紹介する美術館です。
木彫の質感を生かした人物像や、能や歌舞伎をモチーフにした作品など、写実と精神性を兼ね備えた平櫛田中の作品世界をじっくり鑑賞できます。100歳を超えてなお制作に打ち込んだというエピソードとあわせて作品を見ると、その気迫がいっそう強く伝わってきます。
木彫の彫刻作品の写真訪れて感じたこと
木彫の作品の前に立つと、その細部まで作り込まれた表情や衣のひだの表現に、思わず見入ってしまいました。100歳を超えてもこれほど緻密な作品を生み出し続けていたと知ると、単なる技術の高さだけでなく、その気迫や執念のようなものまで伝わってくる気がします。「六十七十は洟垂れ小僧」という言葉も、実際の作品を見たあとだと、単なる名言ではなく、生き方そのものの重みを持って響いてきました。
静かな展示室で、ひとつの人生をまるごと辿るような鑑賞体験ができる、見応えのある美術館でした。
見どころ
井原が生んだ、近代彫刻の巨匠
井原市に生まれた平櫛田中(1872〜1979)は、明治・大正・昭和の三代にわたって活躍した近代日本を代表する彫刻家。岡倉天心や禅僧・西山禾山の影響を受け、伝統的な木彫の技に西洋の彫塑を採り入れました。写実と精神性を兼ね備えた木彫作品は、細部まで作り込まれた表情や衣の表現に見入ってしまいます。
約20年をかけた代表作《鏡獅子》
六代目尾上菊五郎をモデルに、およそ20年の歳月をかけて完成させた《鏡獅子》(原型は東京国立近代美術館蔵)は、田中の代表作として名高い一作。歌舞伎など伝統芸能への深い造詣がにじむ、伝統美と彫刻表現が融合した独特の世界です。
107歳まで現役を貫いた生涯
「六十七十は洟垂れ小僧」の言葉を残し、100歳を過ぎても創作への意欲を失わなかった平櫛田中。107歳で生涯を閉じるまで彫り続けたその生き方そのものが、作品とともに心に残ります。美術館は昭和44年(1969年)に「田中館」として開館し、2023年(令和5年)に「井原市立平櫛田中美術館」としてリニューアルオープンしました。






訪れるときのメモ
展示替えが行われることがあるため、訪問前に公式情報で開催中の展示内容を確認しておくのがおすすめです。井原市美星町の美星天文台など、他の井原市内のスポットとあわせて訪れると、1日の観光コースとして充実します。
情報確認:2026年8月 ※開館時間・休館日・展示内容などは変わることがあります。おでかけ前に、公式情報での最新のご確認をおすすめします。

